、サメよけに磁石が威力発揮、研究で判明、保護に朗報

「あまりにうまく行ったので驚きました」と研究者

「サメに磁石」が、漁業におけるサメ保護の決め手になるかもしれない。

この記事はヤフで取りました:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180821-00010000-nknatiogeo-sctch

 新たな研究によると、磁石にはサメやエイを遠ざける効果があり、漁業用の餌を入れたカゴにこうした魚が間違ってかかってしまうのを防げるようになるという。

【動画】サメよけに磁石が威力を発揮

「あまりにうまく行ったので驚きました」と言うのは、オーストラリア、ニューカッスル大学の海洋生態学者で、学術誌「Fisheries Reseach」に論文を発表したビンセント・ラウール氏だ。

 サメの頭部の前方には、獲物の筋肉の収縮によって生じる微弱な電流を感知する器官がある。

「サメは基本的に、餌が見えなくても、匂いがしなくても、そのありかを感知できます」とラウール氏は言う。

 強力で不自然な磁場、つまり磁石は、サメのこの感覚を混乱させる。ラウール氏はこれを「ドアをあけた途端に強烈な悪臭に見舞われるようなもの」だと言う。「私たちが知るかぎり、動物にとっては非常に不快な刺激です」

 サメが近づかないようにできるかどうかを検証するため、研究チームは、餌を詰めた漁業用のカゴの入り口付近に、長さ約8cmの棒磁石を取り付けた。冷蔵庫に貼る磁石とたいして変わらない長さだが、厚みがあり、ずっと強力な磁石だ。

 シドニーの北にあるホークスベリー川河口の商業漁船は、こうしたカゴを使ってゴウシュウマダイやオーストラリアキチヌを獲っている。だが、カゴに入っている餌は、シロボシホソメテンジクザメやポートジャクソンネコザメ、アラフラオオセ(これもサメ)のほか、ときにシビレエイも引き寄せてしまう。ラウール氏によると、この漁では、望まないサメとエイが全漁獲量の10%を超えるという。

 サメはふつう、カゴに入っても死なないが、ストレスを受けて消耗してしまうため、漁師が海に放してもすぐに大型のサメやその他の魚の餌食になってしまう。サメは漁の損益にも影響する。サメがカゴに入らなければ、その分、ゴウシュウマダイが入れるからだ。

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漁業にもメリットがある

 8カ月にわたり1100個近いカゴをモニターした結果、平均すると、磁石をつけたカゴにかかるサメは、ほかのカゴに比べて30%少ないことが明らかになった。サメが減ったことで、カゴにかかるゴウシュウマダイの量も30%増加した。

「目的としない魚がかかるのを減らす手段は、それ自体がクールです」とラウール氏は言うが、経済的なメリットもある。1個のカゴに5ドルから10ドルの磁石をいくつか取り付けるだけでカゴにかかるサメを減らしてゴウシュウマダイの漁獲量を増やせるなら、資金的に無理なくサメを保全できると氏は言う。

 さらに、一部の漁師は、目的とする魚を獲る効率が上がったおかげで、仕掛けるカゴの数を減らせたと言っていた。カゴの数が少なくなれば、海で失われる漁具の数も減り、そうした漁具により海洋生物が傷つく問題も軽減できる。

 ラウール氏は、カゴに磁石を取り付ける手法は世界のほかの海域でも有効だろうと考えている。今回の研究でカゴにかかったサメは絶滅のおそれはない種だが、ラウール氏は、同じ手法が、ほかの海域の絶滅の危機に瀕するサメの保護に役立つかもしれないと期待している。

「必要なのは責任ある漁業」

 磁石はカゴからサメを遠ざけるのにはよいようだが、この技術をより広い範囲で応用するのは、そう単純ではない。

 今回使われた磁石は永久磁石なので、電流や外部磁場なしに磁力を保てる。しかしラウール氏によると、この磁石が作る磁場の範囲は20cm程度であるという。カゴの入り口に磁石を取り付ければ、カゴに頭を突っ込もうとするサメをよけるのには有効でも、釣り針への応用は期待薄だ。また、海水浴をする人が磁石を身につけていても、サメよけにはならないだろう。

 ある研究では、磁石でガラパゴスザメが釣り針にかかるのをある程度防げたが、サメ同士で餌の奪い合いになると、磁石の効果をものともせずに餌を奪うサメが出てきた。また別の研究からは、延縄(はえなわ)漁の影響を最も受けているヨシキリザメとアオザメは、磁石を取り付けた釣り針でよけられるどころか、かえってかかりやすくなってしまうことが明らかになった。

 このアオザメの研究に参加した海洋生物学者セバスチャン・ビトン・ポルスモゲ氏は、延縄の釣り針に取り付けられるような磁石は、大型のサメをよけるには小さすぎるのかもしれず、取り付けや維持も手間だろうと言う。

 しかし、「オーシーズ保全財団(O’Seas Conservation Foundation)」のサメ学者で、ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受けるクレイグ・オコンネル氏は、中に磁石を入れた長い塩ビパイプで作った柵で、より広い範囲で、ホホジロザメオオメジロザメが入ってこないようにすることに成功している。柵の反対に餌を置いても、サメたちは近づいてこなかった。現在は、浜辺にサメが近づかないように網を設置するのが普通だが、海洋生物が網に絡まってしまうという欠点がある。オコンネル氏は、将来は自分たちの手法がこうした網に取って代わることを期待している。

 海洋生態系をより健全に保つには、新しい漁業技術の発明が必要不可欠だとオコンネル氏は言う。

「必要なのは、もっと責任ある漁業です。目的としないサメを捕まえるのを減らすことができれば、それは正しい方向への一歩だと言えます」