【特集】“山奥ニート”の生活 限界集落に移住した若者たち

和歌山県田辺市の山奥で共同生活をする若者たちがいます。彼らはかつて引きこもりだったり社会になじめなかったり、様々な事情を抱え田舎暮らしに居場所を見出そうとしています。自称「山奥ニート」という若者たちの生活とは?

この記事はヤフで取りました:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180817-10000001-mbsnews-l27&p=1

廃校となった小学校が住居

ボードゲームに熱中する若者たち。部屋ではテレビゲームをしたりギターに没頭する人がいたりと、それぞれが自由気ままに過ごしています。

「6月の初めに来ました。ずっとか、飽きるまでいるつもり」(女性)
「仕事でトラブルがあって、すごく時間ができたので来た。本当にこんな感じで誰からともなくリビングに集まってゲームしたい人がいれば声をかけて、やりたい人が集まってやってる」(女性・35歳)

和歌山県田辺市の山間部にある五味地区。廃校となった小学校の校舎が彼らの住居です。引きこもりの人を支援するNPO法人が運営する場所で、現在は10代から30代の男女17人が生活しています。1か月に1人1万8000円を集めて食費や光熱費を賄っていて、住人らはお金が足りなくなればキャンプ場や旅館でアルバイトをしています。

“集落内でひきこもる”感覚

石井新さん(29)。4年前からここで生活しています。

Q.(調理が)慣れた感じですね?
ニートたるもの料理はできないとね」(石井さん)

この日の昼ごはんは、素麺を使ったオリジナルまぜそば。食事のタイミングも人それぞれ、自由です。食べ終わった食器は自分で洗うことだけがここでの唯一のルールです。

Q.きょうの予定は?
「きょうはどうしましょう。あんまりないです」(石井さん)
Q.石井さんって何なんですか?
「僕は山奥ニートです。山奥でニートしています」

石井さんは、関東で大学生活を送っていたころからひきこもりとなりました。ネットでここの存在を知り、大学を辞めて移住することを決意しました。

「気持ち的にはずっと引きこもり。ここに来るまでは自分の部屋で引きこもっていたのが、ちょっと広がって集落内で引きこもってる感覚。これよりいい道は見つからなかった。毎日めちゃくちゃ楽しいですよ。1人じゃないのはいいことですよ」(石井さん)

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集落の地元住人はわずか7人

この日、石井さんは近所の畑に来ていました。住人らでナスやシシトウを育てているのです。畑は地元の人が無償で貸してくれました。

「まだまだ生かせてないんです。やる気のあるニートが来るといいのですが…」

地元は彼らを歓迎しています。集落には地元住民はわずか7人しかいません。平均年齢も82歳と高齢化しているため、若い力が頼られています。

「ここは限界集落なので若い人が来てくれると心丈夫。草刈りをお願いしたり、困ったことがあると手伝ってもらっている」(地元の人・76歳)

ここにやってくる若者も年々増えています。

Q.ここで寝てる?
「そうですよ。台所なんですけど僕の部屋になっています」(男性・24歳)

台所を部屋代わりにする人がいたりと、いまは16ある部屋がすべて埋まっています。

「社会になじめず」からの気持ちの変化

夕暮れ。晩ご飯の準備が始まりました。食事はその日に作りたい人が全員分を作ります。食べるタイミングも場所も人それぞれ。誰にも縛られることはありません。

「一番安いんですよ、クッキーは自分で作った方が。ある程度おいしいのを量産できるように研究しています」(田中さん:仮名・22歳)

2年前からここで生活する田中さん。田中さんが愛用するのは、段ボール箱で作ったスリッパ。

「これ(スリッパ)、山奥ニート感がでてません?これぞニートって感じ。ティンバーランドって書いてて、もう片方も書いてたんですけど消えちゃいましたね、いつの間にやら」(田中さん)

田中さんも社会になじめずに逃げ出した過去があります。高校を卒業後、静岡県にある工場で働いていましたが、職場の環境が合わず、ここにやってきました。

「プレッシャーを感じて、親に見せる顔がないなと思ってここに来ました。親や会社、世間体とかがめんどくさくて逃げてきた」(田中さん)

“社会に居場所はない”、逃げ込んだあの時からここで生活するうち気持ちの変化が芽生え始めました。

「あの頃は仕事が普通にできる人間だと思ってたけど、今はできない人間だということがわかった。前よりは少し気楽かもしれません、社会になじめないことを自分でわかっているので。今は人生の最後の夏休み。あとは死ぬまで働くだけかなと思っています」(田中さん)

もう一度、社会復帰したいと思うようになったのです。田中さんは来年、ここを出て仕事することを決めました。

自分らしさを取り戻す居場所

社会になじめなかったり、思うような人生を歩めなかったり。そんな彼らにとって、ここは自分らしさを取り戻す大切な居場所になっています。

「ここにいると楽しいことを共有できる人がいるので、それはすごく贅沢ですね。豊かだと思う」(石井新さん)
Q.この生き方は必要?
「必要な人もいると思います。バリバリ働きたい人は働けばいいけど、全員が全員働けるわけではない。そういう人の居場所は必要だと思う」