「ビタミンD欠乏症」の子どもが3倍増。原因は紫外線対策のやり過ぎ?

今、子どもの間で「ビタミンD欠乏症」が増えているのをご存じだろうか。

2017年にGlobal Pediatric Health誌に発表された伊藤明子さん(東京大学医学部附属病院・小児科医師)らの研究において、医療保険のデータから、ビタミンD欠乏症と診断された1~15歳の子どもの割合が、10万人あたり、2009年の3.88人から、2014年には12.4人、つまり5年間で3倍以上増加したことが示されている。

【40度を超える異常な暑さでも日光を浴びた方がいい?】
この記事はヤフで取りました:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180814-00010002-fnnprimev-hlth
原因の一つとして指摘されているのが、“紫外線対策のやり過ぎ”。
異常な暑さが続くこの時期、大人でも“日傘男子”が話題になるなど直射日光はできれば避けたいところだが対策をやり過ぎてはいけないのか?

子どものビタミンD欠乏症とその対策について、東京大学医学部附属病院の小児科医師で赤坂ファミリークリニック院長の伊藤明子さんに聞いた。

太陽の光が皮膚に当たることでビタミンDが作られる

――ビタミンD欠乏症の子どもが増えているのはなぜ?

いくつかの理由が考えられます。
一つには、過度の紫外線対策、もう一つは偏った食べ方です。

紫外線対策については、日傘と紫外線カットのスカーフや上着、徹底した日焼け止めクリームの使用などによってビタミンDを作るための紫外線が子どもたちの皮膚に届きません。

太陽の光が皮膚に直接、当たることで、ビタミンDがわたしたちの体内でできます。
太陽に当たらないためにママ達のカラダでも、赤ちゃんや子どもたちの体でもビタミンDが作られなくなっています。

ゲーム機器などの技術革新や普及で外遊びが減っていることも一因と考えられます。

偏った食べ方については、食べものアレルギーを心配して卵や魚など動物性蛋白を離乳食であげる時期を遅らせてしまってその結果ビタミンDを含む栄養が足りなくなり欠乏状態になってしまうことと、カラダによいと信じて動物性蛋白を摂らない食べ方をする方々において、ビタミンDを含む栄養が欠乏になっている場合とがあります。

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ビタミンDが不足すると、骨がゆがみやすくなる

――ビタミンDが不足すると、子どもの体にどのような影響があるのでしょう?

以前は、ビタミンDは主に骨の成長のために必要と考えられていましたが、ここ数十年で研究が進み、ビタミンDは全身の免疫、皮膚、脳にも重要な役割を担っている栄養素であることがわかってきました。

ビタミンDが不足すると骨がゆがみやすくなり骨折もしやすくなります。

感染症にかかりやすかったり、長期のビタミンD不足の大人ではがんにもなりやすいという研究が日本人のデータを含めて複数あります。

脳の機能にも関係して、発達障害ビタミンD不足が関連したり、皮膚・粘膜の健康にもビタミンDが大切です。
ドライスキンやアトピーの方でビタミンDが不足していることも示されています。

――子どもは1日にどれぐらいの時間、日光を浴びればいい?

季節と緯度によって異なります。
緯度が高ければ高いほど必要な時間が長くなるので、東京と札幌では異なります。

国立環境研究所のサイトでは、その日に、必要なビタミンDを作るために必要な日光浴の時間を記載しており、たとえば8月中旬の日中なら10分がおすすめ、35分以上は日に当たらないように、などの情報があります。


――40度を超える異常な暑さでも紫外線対策をせず、日光を浴びた方がいいの?

異常な暑さの中で無理しての日光浴はおすすめしません。

早朝か、夕方、自分の居場所の緯度と時間でどれくらいの日光浴が適切か国立環境研究所のサイトでもわかるので、それらを活用して短時間の日光浴がよいと思います。


――子どもが1日に必要なビタミンDの量はどれくらい?

厚生労働省の栄養摂取基準(2015年)では、0歳児の1日のビタミンD摂取の目安を5マイクログラム、上限を25マイクログラムとしています。
一方、アメリカでは生後から1日のビタミンDを16マイクログラム(アメリカではIU=International Unit国際単位を単位として使用のため、400 IU)をすべての赤ちゃんに与えるよう推奨しています。

また、国立環境研究所では1日に必要なビタミンDを15マイクログラムとしています。

ビタミンD摂取のおススメの食べ物は「卵」と「鮭」

――子どもが1日に必要なビタミンDの量を摂取するためには何をどれぐらい食べればいい?おすすめの食べ物などを教えて下さい

1日に必要なビタミンDの量を15マイクログラムと考えて、それを食べもので摂取するには卵黄1個(Lサイズの卵の卵黄で重量で18gあたり1.2マイクログラムのビタミンD)+鮭40グラム(ビタミンDは約15マイクログラム)です。

きのこはビタミンDが「豊富」といわれていますが、まいたけ100g中のビタミンDは7.7マイクログラムで、100gもまいたけを食べる人は少数派と思われ、30gのまいたけで2.3マイクログラムです。

離乳食なら油漬けのツナ缶50gに2マイクログラム含まれます。
おすすめは「卵」と「鮭」です。



太陽の光を浴びることは子どもの成長に必要で、紫外線対策のやり過ぎはよくないことが改めてわかった。ただ、時間帯を選んだり食べ物でカバーしたりといった適度な対策であって、最近の異常な暑さの中で無理してでも日光浴をするということではないので注意してほしい。

伊藤明子(みつこ)
赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事
東京大学医学部附属病院小児科医師、東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室非常勤講師。同時通訳者。著書に「小児科医がすすめる最高の子育て食」(講談社)ほか。